連載「自分専属のAI秘書を作る」第4回
自分専属のAI秘書を作る 第4回(最終回): 外部サービスに繋いで、無人でも止まらない秘書にする
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連載の最終回だ。第1回で何を任せるかを決め、第2回で記憶を持たせ、第3回で常時稼働の「箱」に住まわせて先回りさせるところまで来た。ただ、ここまでの秘書には決定的に足りないものがある。カレンダーもタスクも知らないことだ。予定を知らない秘書の朝のブリーフィングは、中身のない挨拶にしかならない。最終回の今日は、秘書を外部サービスに繋ぐ手順と、無人で回し続けても「止まらない」ための番人の立て方をやる。この2つが入って、連載の秘書は完成する。
連載を通して言ってきたとおり、繋ぎ込みの実作業もAIの担当だ。あなたが持ち帰るのは、何を任せてどう指示するかという型の方でいい。
結論 最終回は外部連携。カレンダーやタスク管理にAPIで繋ぐと、ブリーフィングが本物になる。安全の線引きを表にし、止まらないための「番人」を置く。実際に踏んだ罠も正直に書く。
カレンダーに繋ぐと、ブリーフィングが本物になる
まずカレンダーから。秘書がカレンダーを読めるようになると、ブリーフィングが一気に実用になる。「おはよう」の返事に今日の予定がそのまま並ぶようになるからで、体感としてはここが「賢いチャットボット」から「秘書」に変わる瞬間だった。
繋ぎ方はMCPを使う。MCPはAIツールが外部サービスを叩くための共通の仕組みで、対応しているサービスなら、こちらが「カレンダーを読んで」と言うだけでAI側が予定の取得までやってくれるようになる。APIの仕様書を自分で読む必要はない。手順はこうだ。
- 使っているAIエージェント(僕はClaude Code)に、カレンダー用のMCPを登録する。登録方法は各ツールのドキュメント通りで、基本はコマンド1つか設定ファイル1枚で済む。
- 登録できたら、まず対話で「今日の予定を読んで」と試す。予定が返ってくれば接続はできている。返ってこないならここで直す。連携の不具合は、定期実行に載せる前の対話の段階で潰しておくのが鉄則だ。
- 指示書(エージェントが起動時に読むファイル)に「『おはよう』が来たら今日と明日の予定を読んでブリーフィングに入れる」と書く。これで毎朝のブリーフィングに予定が入る。
- 同じ指示書に「カレンダーへの書き込みは、内容を見せて事前確認してから」と明記する。
MCPの登録でつまずいたら、それこそAIに任せる場面だ。「このカレンダーと繋ぎたい」と相談すれば、手順の調べものから設定の中身まで向こうが出してくる。仕組みの名前に気後れしなくていい。名前を覚えるより、繋ぐ相手と読み書きの線引きを決める方がずっと大事だ。
運用の小技として、読む範囲は「今日だけ」より広めに取るのがいい。うちは数日先まで読ませていて、おかげでブリーフィングに「金曜のこれ、そろそろ準備が要るんじゃない?」が混ざるようになった。予定を読むのが今日だけだと、秘書は当日の朝しか先回りできない。窓を広げるだけで、締切の先回りまでできるようになる。
4が大事で、読むのは自動でいいけど、予定の書き込みは必ず確認を挟む。読み取りは失敗しても「ブリーフィングに予定が出ない」だけで済むのに対し、書き込みの失敗は「予定が二重に入る」「時刻を間違えて登録される」「最悪、既存の予定が消える」に直結する。カレンダーは生活の正本なので、ここが汚れると被害がでかい。秘書に鍵は渡すけど、金庫を開けるときは隣で見てる、くらいの温度がちょうどいいと思う。
タスク管理も繋ぐ。読み書きはAPI経由
次にタスク。僕はタスク管理に自作のアプリを使っていて、秘書にはそのHTTP APIを叩かせている。やらせているのは追加・完了・一覧の3つだ。「今日のタスクは?」で一覧を取ってブリーフィングに混ぜ、「〇〇やっといて」で追加し、終わったものに完了を打つ。
自作である必要はまったくない。既製のタスク管理サービスでも、HTTP APIが公開されていれば同じことができる。指示書に「タスクはこのAPIで読み書きする。一覧はこのエンドポイント、追加はこれ」と書いておくだけで、あとは秘書が自分でAPIを叩いてくれる。MCP対応のサービスなら、カレンダーと同じくMCPの登録だけで済んでもっと楽だ。
APIと聞いて自分には無理だと感じた人も、ここで引き返さないでほしい。エンドポイントの調べ方も、指示書に書く文面も、AIに頼めばそのまま出てくる。手を動かすのは今回もAIだ。
ここでもルールはカレンダーと同じ。一覧(読み)は自動、追加と完了(書き)は確認を挟む。実際のやりとりはこんな感じだ。「レポートの締切、タスクに入れといて」と言うと、秘書が「『応用数学レポート提出(金曜締切)』で追加していい?」と内容を見せてくるので、Yesで確定する。ひと手間に見えるけど、タイトルや締切日の取り違えがこの一往復で全部止まる。特に完了のほうは「終わってないタスクを秘書の早とちりで消す」事故が起きうるので、確認必須にしている。タスクが勝手に消える秘書は、タスクを知らない秘書より怖い。
安全の線引きを一枚の表にする
連携が2本になった時点で、操作ごとに「これは自動でいい?」を毎回考えるのはやめて、線引きを一枚の表にして指示書に貼った。うちの現物を一般化するとこうなる。
| 自動でやっていい | 必ず確認を待つ |
|---|---|
| 予定・タスク・ファイルを読む | メール・メッセージの送信 |
| 情報をまとめる・要約する | 課金・購入 |
| 下書きを書く(送信はしない) | 予定・タスクの書き込み |
| 実行ログを残す | ファイルや予定の削除 |
迷いやすいのは「下書き」の扱いだと思う。うちでは、メールの返信文を作るところまでは自動でいい。でも送信ボタンは押させない。下書きのまま止めておいて、目を通してから自分で送る。作る(左)と送る(右)を分けると、AIの速さと人間の責任の両取りができる。
原則は1行で言える。読むのは自動、動かすのは承認制。左の列は事故っても取り返しがつくが、右の列は世界の状態を変えるので取り返しがつかない。「取り返しがつくかどうか」で線を引くと迷わない。運用実績が貯まってきたら、右の列の一部を左に昇格させればいい。逆方向の引き直しは事故の後にやることになってつらいので、最初は厳しめに引くのがおすすめだ。
止まらないための番人。実際に踏んだ罠3つ
さて、ここからが最終回の本題かもしれない。連携を増やして定期実行で回し始めると、今度は「気づいたら止まっていた」との戦いになる。僕が実際に踏んだ罠を、対策とセットで3つ置いておく。
1つ目、許可待ち。ある朝、定期実行のブリーフィングが来ていなかった。真っ先に利用量オーバーを疑ったんだけど、違った。原因は、秘書がツール操作の許可を求めたまま止まっていたことだった。対話中なら「この操作を許可する?」に自分がYesと返すだけの場面が、無人だと誰もYesを返さない。エラーも出ない。誰もいない画面の前で、秘書はただ黙って許可を待ち続けていた😡 対策は、定期タスクで使う操作をあらかじめ許可リストに通しておくこと。このとき「その日の日付入りファイル名」みたいな具体値で許可を書くと、翌日は別のファイル名になってまた止まる。汎用パターンで書くのが大事だった。
2つ目、作業フォルダのずれ。常駐の仕組みから起動すると、エージェントの作業フォルダが想定とずれることがある。すると何が起きるか。肝心の指示書と記憶がそのフォルダに無いから、読まれない。つまり第2回までかけて育てた記憶を全部忘れた、素のAIとして働いてしまう。恐ろしいのは、それでも一応それっぽい出力が出ることだ。動いてるのに中身が抜けてる、という不気味な状態で、僕は出力の様子がおかしいことでようやく気づいた。常駐プロセスの挙動が変なときは、まず起動時の作業フォルダを疑うといい。
3つ目は罠というより教訓で、上の2つはどちらも、無人だと数日気づけない。ブリーフィングが3日分欠けてから気づくと、けっこう痛い。だからルーチンは毎回ログを残す。凝ったものは要らなくて、「いつ・何を出したか」を1行追記するだけでいい。うちのログはこんな見た目だ。
07-17 07:30 朝ブリーフィング送信 予定3件・タスク5件
07-18 03:00 日記の下書き生成・保存OK
07-18 07:30 朝ブリーフィング送信 予定1件・タスク6件
ログが毎日1行ずつ増えていれば健康、増えていなければその日から止まっている。止まった瞬間を後から特定できるだけで、原因調べの手間が全然違う。番人の正体は、この1行ログだ。
改修は設計とコードで分担する
最後に、こうした連携やルーチンの改修を誰がやっているかの話。設計は自分で、コード生成はGPT-5.6(Sol)に委譲している。Claudeが設計とレビューを持ち、Codex CLI経由でSolが実装を書く分担だ。秘書の改修案を秘書と練って、実装は別のAIに投げる。この組み方はこれで一本書けるくらい面白いので、別連載「ClaudeとChatGPTを連携させる」に詳しく書いた。興味があればそちらを。
関連連載 ClaudeとChatGPTを連携させる 秘書の改修を任せている「監督はClaude、実装はSol」のリレー。得意分野の使い分けから委譲の仕組みまで全3回。 連載を読む →連載の終わりに
4回でやったことを並べる。何を任せるかを決めて(第1回)、記憶を持たせて(第2回)、常時稼働の箱で先回りさせて(第3回)、外部と繋いで、安全に、止まらないようにした(第4回)。
始める前は「自分が覚えておく」が仕事の土台だった。予定も締切もタスクの在り処も、最後は自分の頭が正本だった。いまはそれが箱の中の相棒に引き継がれていて、僕は朝「おはよう」と送るだけでいい。自分専属の秘書は、作れる!
最後にもう一度だけ。この4回で持ち帰ってほしいのは設定の細部じゃなくて、何を任せて、どこで確認を挟むか、という考え方の型だ。構築も改修も日々の運用も、実際の手はAIに丸投げできる。「自分にできるかな」じゃなくて「AIに頼めばいいんだ」で始めてもらえたら、この連載を書いた甲斐がある。
よくある質問
AI秘書をカレンダーやタスク管理に繋ぐには?
それぞれのAPIを使ってAIから読み書きさせる。予定やタスクを実データで扱えるようになり、朝のブリーフィングが実用レベルになる。
自動で動く仕組みが止まらないようにするには?
ちゃんと動いているか見張る「番人」の仕組みを置く。エラーで止まったら気づけるようにしておくのが、無人運用の肝になる。
AIに外部サービスを触らせる時の安全対策は?
何を許可し、何を承認制にするかを一枚の表にまとめる。特に送信・課金・削除は自動化せず、必ず人の確認を挟む。