連載「自分専属のAI秘書を作る」第3回

自分専属のAI秘書を作る 第3回: 常時稼働と定期実行で、言われなくても先回りさせる

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ここまでの2回で、秘書は「おはよう」の合図でブリーフィングを返すようになったし、僕の好みも記憶として覚えた。でもまだ足りない。今の秘書は、こっちが話しかけたときだけ動く。本物の秘書は呼ばれる前に動く。今回はそこをやる。

仕掛けが増える回だけど、身構えなくて大丈夫。組む作業はAIに投げられるから、押さえるのはいつもどおり、何を任せてどう指示するかの型だけだ。

やることは2つだけだ。電源を入れっぱなしにした常時稼働のPC(うちでは「箱」と呼んでいる)を1台用意して、その中でAIを動かすこと。そして、OSのタスクスケジューラに時刻でルーチンを登録すること。この2つが揃うと、朝起きた時点でブリーフィングがもう書き上がっている生活が始まる。

結論 第3回は常時稼働。秘書を「箱」(つけっぱなしのマシン)に住まわせ、定期実行を登録して、言われなくても先回りさせる。承認が要ることの線引きを最初に引くのが肝。

なぜ常時稼働が要るのか

手元のノートPCで秘書を手動起動している限り、秘書は絶対に先回りできない。理由は単純で、ノートPCは蓋を閉じたら止まるからだ。

朝のブリーフィングを読みたいのは起きた直後だ。その時間に自分でPCを開いて、秘書を起動して、「おはよう」と打つ。これでも動くんだけど、それはもう自動じゃなくて、毎朝自分でスイッチを押しているのと同じになる。夜の日記も同じで、寝る前にわざわざPCに向かうくらいなら日記は続かない。僕がそうだった。秘書を組んだ直後はノートPCで手動運用していて、最初の数日は物珍しさで自分から話しかけるんだけど、1週間もすると「おはよう」を打つこと自体をサボり始めた。人間側の意思に頼る仕組みは、人間側が飽きた瞬間に終わる。

だから発想を変えて、秘書を24時間動きっぱなしの場所に住まわせる。そして「人間が話しかける」の代わりに「時刻が来る」をきっかけにして、勝手に働いてもらう。こっちが寝ていても秘書は働く。この一点のために常時稼働が要る。

秘書の住処は「箱」

新品のサーバーを買う必要はない。使っていない古いPCで十分だ。僕も余っていた古いデスクトップPCを常時稼働機にして、その中で秘書を動かしている。中古のミニPCでもいいし、ラズパイでもいい。要は「電源を入れっぱなしにしても惜しくない1台」があればいい。

箱の中でAIを動かすときのポイントは、headlessモードを使うことだ。Claude Codeみたいなツールには、チャット画面を開かずにコマンド一発で指示を実行して終了するモードがある。claude -p "指示" のような形だ。人間が画面の前に座っていなくても、コマンドさえ叩かれれば秘書が起動して、仕事をして、静かに終了する。無人運用の土台はこのモードだ。

聞き慣れない言葉が出てきて難しそうに見えるかもしれないけど、人間側が覚えることはほぼ無い。この起動用の1行そのものを「headlessで動かすコマンドを書いて」とAIに作らせればいいからだ。

なお、古いPCを常時稼働機にする作業そのもの(電源とスリープの設定、置き場所、外から安全に様子を見に行く方法)は、それだけで連載1本ぶんの話になるので、別連載「古いWindowsをAIサーバーにする」で詳しくやる。今回は箱がもうあるものとして進める。

定期実行を登録する

箱が用意できたら、ルーチンを時刻で登録していく。手順はこうだ。

  1. ルーチンごとに、短い指示ファイルを1枚書く。「何を読んで、何を出すか」だけを書いたテキストファイルで、新人秘書に渡す業務マニュアルのつもりで書く
  2. OSのタスクスケジューラを開く。Windowsなら「タスクスケジューラ」、MacやLinuxならcronがこれにあたる
  3. 「決めた時刻に、headlessモードで指示ファイルを実行する」コマンドを登録する。指示ファイルを読ませて実行させる一行だ
  4. まず1本、数分後の時刻でテスト登録して、出力が実際に生成されるところまで確認する。いきなり明朝を待つと、失敗していたとき丸一日無駄になる
  5. 動いたら本番の時刻に直して、残りのルーチンも同じ形で足していく
  6. 各ルーチンの最後に「実行した日時と結果を実行ログのファイルへ1行追記する」を入れておく。無人運用では失敗してもエラー画面を見てくれる人がいないので、翌朝ログを見れば昨夜の秘書が働いたかどうか一目でわかる状態にしておく

タスクスケジューラなんて触ったことがない、という人もここで閉じないでほしい。指示ファイルの下書きも、スケジューラに登録するコマンドも、「毎朝7時にこの指示ファイルを実行するよう登録したい」とAIに言えば出てくる。こっちが決めるのは、いつ・何を・どこに出すか。それだけだ。

うちで回っているのは3本。朝に「おはよう」相当のブリーフィングを生成、夜にその日の記録から日記の下書きを生成、日曜の夜に1週間のふりかえりを生成。あとは週3本のブログ下書きもこの仕組みに乗っていて、実はこの記事の骨組みも定期実行が作った。

一つ実体験を書いておくと、最初は朝のルーチンを早朝に詰め込んでいたら、AIの利用上限に当たってブリーフィングが生成されない日が出た。楽しみに起きたのに何も無い😡 ルーチンの時刻を分散させたら安定したので、複数のルーチンを同じ時間帯に固めないのは地味に大事だと思う。

ルーチンの中身は「読む、まとめる、置く」

指示ファイルには何を書くのか。どのルーチンも骨組みは同じで、「読む対象」「まとめ方」「置き場所」の3点だ。朝のブリーフィングならこうなる。

# 朝ブリーフィング指示書

1. カレンダーから今日の予定を読む
2. タスク一覧から未完了のタスクを読む
3. 締切が近いものを抽出する(日付と曜日をセットで書く)
4. 以上を踏まえて「今日の一手」を3つ選ぶ
5. 予定 → タスク → 締切 → 今日の一手 の見出し順でまとめて、
   ノートフォルダの「ブリーフィング/(今日の日付).md」に書き出す

これだけだ。プログラムは書いていない。日本語の手順書を毎朝AIに実行させているだけで、カレンダーやタスクの読み方は第2回までに繋いだ連携がそのまま使われる。「今日の一手」を3つまでに絞っているのには理由があって、10個並んだやることリストは朝の頭には多すぎて読み飛ばすからだ。秘書に「今日はまずこの3つ」と言い切らせる方が、実際に手が動く。

夜の日記ルーチンは「その日の作業ログと予定の消化状況を読んで、日記の下書きを作る。ただし気持ちの欄は空けておく」にしている。事実の整理は秘書の仕事、気持ちを書くのは僕の仕事、という分担だ。週次は「1週間分の日記とログを読んで、やったことのまとめと来週の計画案を作る」で、日曜の夜に出てくる。

ちなみにこういうルーチンの追加や改修は、設計を僕がやって、コード生成はGPT-5.6のSolにCodex CLI経由で書かせている。秘書の改修を別のAIが実装する分業になっていて、この話もいずれ別の連載でちゃんと書きたい。

出力はスマホで読める場所に置く

生成物の置き場所は、スマホからも読める場所にするのが大事だ。せっかく朝にブリーフィングができていても、箱の中のフォルダに置きっぱなしでは誰も読まない。

僕はクラウド同期しているノートアプリのフォルダに書き出させている。連載「Obsidianを第二の脳にする」で作った保管庫がそのまま届け先だ。同期フォルダに書き出しさえすれば、朝起きて布団の中でスマホを開くと、今日の予定と締切と「今日の一手」が3つ、もう並んでいる。読む側の手元に届くところまでが秘書の仕事だ!

承認制の線引きを最初に引く

最後に、いちばん固くやるべき話。定期実行の秘書は、人間が見ていないところで動く。だからこそ「勝手にやっていいこと」と「必ず人間の確認を待つこと」の線を、動かし始める前に指示ファイルへ明記しておく。うちの線引きはこうだ。

勝手にやっていい           | 必ず確認を待つ
-------------------------- | ------------------------
読む(予定・タスク・ログ)   | 送信(メール・メッセージ)
まとめる・分析する         | 課金・購入
下書きを作る               | カレンダーへの書き込み
決まった場所への書き出し   | ファイルの削除

左側は、失敗しても実害がほぼ無い操作だ。読み間違えたまとめは翌朝読んで直せばいい。右側は取り返しがつかない側で、寝ている間に変な文面のメールが飛んだり、予定が書き換わったりしたら困るどころじゃない。だから右側は「下書きや提案までは自動で作っていいが、実行は人間の承認を待つ」と書いておく。たとえば返信が要りそうなメールを見つけたら、秘書は下書きまで作ってブリーフィングに「これ送っていい?」と載せてくる。送るボタンを押すのは僕だ。ここまでやっても手間はほとんど増えないのに、事故の芽はきれいに消える。

信頼できてきたら左側を広げたくなるんだけど、広げるのは運用実績が貯まってから、操作の種類ごとに1個ずつでいいと思う。無人で動く相手への権限は、あとから広げるのは簡単で、事故ってから狭めるのは手遅れだからだ。

次回: 外部連携と、止まらないための番人

これで秘書は、呼ばなくても朝・夜・週末に勝手に働くようになった。ただ、無人運用には無人運用特有の問題がある。止まっていても誰も気づかない、という問題だ。数日分のブリーフィングが丸ごと欠けてから気づくと、けっこう痛い。

次回の第4回は、外部サービスとの連携を広げる話と、秘書がちゃんと働いたかを見張る「番人」の仕組みを作る話をやる。秘書に秘書のお目付け役を付ける回だ。

今回は仕掛けが多めだったけど、どの手順も実作業はAIに投げられる、というのは思い出しておいてほしい。人間の持ち場は「何時に、何を、どこまで任せるか」を決めるところで、そこさえ決まればあとは頼むだけでいい。

よくある質問

AIに定期的な作業を自動でやらせるには?

つけっぱなしのマシン(箱)に住まわせて、スケジュールで定期実行を登録する。朝のまとめや日記など「読む・まとめる・置く」を自動化できる。

AIの自動実行に常時稼働のPCは必要?

決まった時刻に動かすなら、その時に起きているマシンが要る。使ってないPCやミニPCを常時稼働の箱にするのが定番。

AIに勝手に動かせて大丈夫?

危ない操作(送信・課金・削除など)は承認制にして、最初に「勝手にやっていいこと/確認が要ること」の線引きを決めておくと安全。